キオクシアのSSD事業部では、SSDの頭脳ともいえるファームウェアの開発エンジニアが数多く活躍している。ここでは、ストレージソリューションの最前線を担っている4人に、ソフトウェアエンジニアならではの働きがいを語ってもらった。。
dSSD技術部G.
2015年4月キャリア入社、電子工学専攻。前職はオーディオメーカーの組込みソフト開発。より自由度の高い開発環境を求めて当社のSSD事業部に転職。データセンターSSD技術部は、ITのグローバルプラットフォーマーのお客様に、大容量・高速・高信頼性を兼ね備えた超高性能のデータセンター向けSSD製品を開発している。
cSSD技術部Y.
2015年4月キャリア入社、情報科学専攻。前職では電子機器の組込みソフト開発に取り組むが、開発拠点が海外にシフトしたことから、自らの手で開発できる場を求めて当社に。クライアントSSD技術部は、PCやタブレット、ゲーム機などに搭載または外付けで使われるコンシューマ向けSSDを開発している。エンタープライズSSD技術部、データセンターSSD技術部と同じく、製品技術、SoC、ファームウェアの開発が三本の柱。
eSSD技術部 M.
1995年4月、新卒で東芝に入社。電気情報学科卒。マイコンの組込みソフト開発などに従事した後、2007年9月からSSDのファームウェア開発に携わる。エンタープライズSSD技術部の主要な顧客は、サーバーやストレージの世界大手メーカー。大容量かつ高性能のハイエンドSSDの製品技術、SoC、ファームウェアを開発している。
SSD要素技術部 K.
2004年4月、新卒で東芝に入社。コンピュータサイエンス専攻。東芝PC部門でアプリケーション開発に携わったのち、社内制度で2016年に当社に転籍。SSD要素技術部は、アーキテクチャ、セキュリティ、ECC(エラーの検出・訂正)など、SSD製品の開発に必要な要素技術、特に新製品の開発に資する基盤技術・共通技術を開発・提供している。
Q1 SSDのどのような技術領域、業務分野を担当しているのですか。
M. エンタープライズ向け製品のファームウェアを開発しています。海外の大手コンピュータメーカーのお客様向けの開発ですが、要求仕様に即した顧客専用のカスタムSSDをつくりあげていきます。お客様とのやりとりは、国内と海外の応用技術部のメンバーが中心になって進めますが、より技術的な説明が必要な場合は私も参加することがあります。役割分担がはっきりしているので、私たちはファームウェア開発に専念できます。やりやすい環境ですね。
G. 私の所属している部署では、データセンター向けSSDのSoCとファームウェアを開発しています。データセンター向けSSDは、アメリカ等海外にも開発拠点があり、緊密に連携しながら業務を推進しています。私は日本側のファームウェアのバックエンド開発のサブチームのリーダーとして、協力会社にも力を借りつつプロジェクトを進めてきました。
Y. 大手ブランドのPCに搭載されるSSDなど、コンシューマ向け製品のファームウェア開発を担当しています。バックエンドのチームリーダーで、やはり当社と協力会社のエンジニアを統括しています。お客様のPCの機種ごとにカスタムメイドしていくので、同時並行で別々の案件を進めるケースもあります。
K. 私は要素技術部で、エンタープライズ向けSSDのセキュリティモジュールを開発しています。ひとことで言うと、万一SSDが紛失や盗難があっても安全にデータを守れるよう、ファームウェアで暗号化処理を行うのです。ファームウェアが解析されてしまうと、データを盗まれるリスクがあるため、ファームウェアをダウンロードできない仕組みを考えたり、製造や出荷の工程まで管理したり、ソフトウェアの観点からどのように組み立てれば厳格なセキュリティを確保できるか、多角的に追求しています。
Q2 これまでの業務で、最も印象に残っている案件や体験は?
Y. 直近のプロジェクトです。PCに搭載するSSDのハードウェアのアーキテクチャを検討する段階から、ファームウェアエンジニアとして唯一参画し、ハード側と知見を交換しながら、ソフト視点から意見を出しました。その後のファーム開発でも初期の検討フェーズから設計・実装まで手掛けて、私なりのアイデアを組み込みました。製品としてリリースした後も、機能の追加や、動作情報を取得して性能を向上させる取り組みも任せていただきました。長期間、最初から一貫して関われたので、愛着を持てますし、自分が創りあげたという手ごたえを実感しています。
K. 私はPCアプリの開発からSSDのセキュリティにシフトしたので、最初はストレージの知識がなくて不安でしたが、その不安は転籍後いい意味で裏切られました。ソフトウェアの観点では変わらなかったからです。そのうえ、NWやDB、Windowsなど、PCで培ったスキルが実はSSDにも有効活用できるところがありました。ずっとSSDをやってきたメンバーは知らない人が多かったので、私が積極発信することでチーム全体に新たな知見をインストールできたと思っています。逆に、フラッシュメモリの読み書きの仕組みやファームウェアのデバッグなど、私が知らなかったスキルをメンバーから教わりました。ギブ&テイクでお互いに知見が広がり、SSDのファームは未経験でも、何かソフトの知識・経験があればきっと活かせる。新しい知識を吸収できて視野が広がると言えますね。
G. 私はクライアント向けSSDも兼務しているので、そちらでの話ですが、競合とのベンチマークが当たり前の世界なので、製品が実装されてからも『こんな仕様を追加したい』というオーダーをいただくこともあります。設計の考え方やアルゴリズムが異なるので、すべてに対応できる訳ではないのですが、お客様と方向をすり合わせながら、より良いソリューションへの道を見出します。そういう時、ファームウェアのエンジニア全員が集まって意見を出しあい、みんなで力をあわせて解決を図る風土があるので、自然に燃えますね。
M. エンタープライズ向けSSDは最高度の性能が求められるため、開発期間が長期にわたります。要求仕様に応じたサンプルをお客様に出し、バグや不具合の指摘、性能に対するフィードバックをもらって、改善して、またサンプルを出して…を繰り返すので、日常の目の前の課題を解決できた時は小さな達成感。それを積み重ねて、お客様の認定を獲得して採用に結びついた時は大きな達成感と、嬉しい瞬間を何度も味わえる仕事です。
Q3 キオクシアでSSD事業に関わる魅力を教えてください。
K. クライアント向け・企業向け・データセンター向けの製品をすべて手がけています。自社で技術・情報を共有しながら、ハードの標準化などを図れるのがメリットその1。その2は、お客様と真摯に向き合い、できる限りオーダーに応える姿勢です。時代の流れやニーズの変化とともに進んでいく文化が定着しているので、常に旬のテクノロジーをキャッチアップできます。
M. メモリメーカーのSSD事業部なので、新しいメモリの企画フェーズから情報が分かるし、サンプルを活用して新しいSSDを開発し、いち早く市場に製品をリリースできます。加えて、SSDには規定の耐用年数があるので、エイジングのコントロールがファームウェアの肝だと言われています。その点、私たちはメモリ事業部との連携により細部までフラッシュメモリの仕様を把握して、製品化を優位に進めていけます。
G. 同感です。フラッシュメモリもコントローラもSoCもファームウェアも、一気通貫でやっているのが、いちばんの強みでしょう。世界でも数社に限られますからね。
Y. 『ソフトウェアエンジニアにとって働きやすい』という点です。予算も出してもらえるので、必要なツールや装置類は、最新のものを購入して使えます。例えば、SSD内部の動きを自動でサーバーに収集して分析・評価するシステムがあり、見たいレビューが見やすく提示されるので、とても助かっています。異業種の組込みソフトエンジニアが私たちのオフィスに来たら、『うらやまし過ぎる』と驚くくらい、開発環境が充実していると自信を持っています。
Q4 キオクシア=ハードエンジニアというイメージを持つ方が多いなか、ソフトウェアエンジニアとして活動する魅力とアピールしたい点は?
G. 目的があって意味があると認めてもらえれば、必要な決裁は承認してもらえます。教育研修も充実しています。ソフトエンジニアとしてスキルアップできる環境が整っているのです。私自身、制御ソフトの枠にとどまらず、幅広くSSDのシステムに関わり、自分の技術を磨いていこうと目指しています。
Y. 先ほどの続きですが、機能検証やWindowsでの検証など、SSDの動作データが集中管理されていて、自由にアクセスできます。データの「見える化」が進んでいるので、サーバー上にアプリをつくってデータを引っ張って評価ツールを自作したり、最新のサーバー技術やプログラミングが好きで詳しい人が多いので、ソフト談義も盛り上がります。すごい数のサーバーがあって、いろいろなビッグデータにアクセスできるので、私は機械学習に活かしていこうと考えています。
K. 自由度のある働き方も特筆ポイントですね。在宅勤務をはじめ、新しいワークスタイルを積極的に取り入れているので、働きやすいからです。有休も自由に取得できます。自分の好きなように開発環境をカスタマイズできるのも魅力で、私は自動化を追求して、人がやらなくてもいい作業を減らすようにしています。
Q5. 最後に、転職を検討中の方へのメッセージをお願いします。
M. ファームウェア開発の話がメインになりましたが、他にもさまざまなソフトエンジニアの仕事があります。ファームウェアをつくるための環境をビルドする人、仕事をしやすくするための開発環境を整える人…など。ソフトウェアの知識・経験があれば活かせると思います。業務やポジションは融通がきくので、ぜひたくさんの方に来ていただきたいですね。
Y. フラッシュの制御、ホスト側との連携、フロントエンド/バックエンドなど領域が幅広いので、組込みに直結ではなくともスキルが活かせる場面が多いと思います。なんとなく興味はあるけれど・・・という人でも、最低限C言語さえ知っていれば問題ありません。
K. どのITソリューションにもストレージは不可欠です。思い出も記憶も、データとして保存してこそ真価が生まれます。SSDは、すべての人の記憶を記録・保存できるシステムであり、5Gの時代が来れば、ますますニーズが高まります。どう世界や技術が変わろうと、データは変わりません。みんなの思い出・記憶を保存するストレージを、自分たちがつくっていくのだとイメージしてみてください。モチベーションが湧きますよ。
G. 純粋にソフトウェア技術の好きな人が集まっている事業部です。自分の意見を論理だてて説明できれば、社歴やキャリア、年齢に関係なく挑戦の機会が多数あります。大事なのは、今の知識や経験より、これから何を身につけていきたいか。自らの明日にチャレンジしていく人なら、成長の機会は十分。ぜひ、『自分はこれをやりたい』という思いをもって応募してください。
※インタビュー内容は取材時のものです。(2019年取材)