SSD事業部のフラッシュストレージ事業戦略部門はストレージやコンピューティングの次世代を切り拓き、記憶や記録に関わる近未来のテクノロジーを探究している。同部門に所属する活躍中のエンジニアから、独創性に富む研究開発の実際をお伝えします。
フラッシュストレージ事業戦略部 M.
大学院修士課程でUNIX系の新しいOSの開発を専攻して1997年4月、東芝に新卒入社。17年ほど研究開発センターに在籍し、インターネット家電、Bluetoothや無線LAN、放送系ネット機器、ストレージの高速ネットワークなど、その時々の先端製品・先端技術の研究開発に従事。東芝メモリ(現・キオクシア)の分社およびSSD事業部フラッシュストレージ事業戦略部の発足を受けて東芝メモリ(現・キオクシア)に転籍。現在に至る。
Q1 フラッシュストレージ事業戦略のミッションや概要を教えてください。
コンピュータが今後どうなっていくか? あるいは、ハイパースケーラーのデータセンターからコンシューマの端末に至るすべての用途で近い将来、フラッシュメモリやストレージがどう使われるのか? キオクシアとして「先を読んで先端製品・先端技術を世に出す」のが、私たちフラッシュストレージ事業戦略部のエンジニアのミッションです。
例えば、複数のSSDを有機的に結んで高速作動させるファブリック経由の接続機能、GPUの画像処理性能を高めるアクセラレータとフラッシュメモリの組み合わせなど、当社が通常は関与していないソフトウェアやハードウェアの研究開発まで手がけています。社内ベンチャー的な立場なので、何でもありの反面、世の中にまだないものを手掛けているからこそ必要性や関係者の理解を得るのは平易な道ではありません。直近ではイスラエルの研究開発メンバーと連携して開発してきた『KumoScale™』のように製品として立ち上げる段階に入ったプロダクトもあります。しかし、発足して2年半ほどの新しい部署ですし、次世代をターゲットにしているので、まだまだこれから。引き続き第二・第三の成果を挙げていこうと期しています。
さらに製品づくりにとどまらず、新規事業の企画・立ち上げ、技術戦略の提言、必要ならM&Aにも踏み込める機会もあります。前述の通り、未知なる道を開拓するので困難は伴いますが、明日の世の中にインパクトを及ぼす製品や事業を創出するという強い想いをもって努力を続けています。
Q2 今まで手掛けられた具体的な業務を教えてください。
私は基本的にひとつのテーマを、1年~1年半のスパンで追究しています。
フラッシュストレージ戦略事業部門の前身部門では、データセンター向けのマイクロサーバーに関して、HDDと同じ3.5インチサイズの、小さくて処理能力の高いサーバーをネットワーク化して高速計算を行おうというトライアルを行っていました。
次に現在の部署が発足後、『KumoScale™』のプロトタイプを考えるチームのリーダーを務めました。ターゲットとしていたエンタープライズのSSD領域では、多数のSSDをつないだストレージが当たり前に使われるようになるため、当社もSSD(デバイス)の提供だけではニーズに応えきれない。複数のSSDで構成されるストレージ(システム)を高速で働かせるソフトウェアまで提供する必要がある、という観点からのアプローチです。ただ、ストレージ(システム)を高速で働かせる機能は、既存ソフトウェアの組み合わせでもつくれるため、メモリメーカーでありSSDメーカーである当社ならではの信頼性や付加機能を、いかに打ち出すかが肝。私のチームで初期の検討を行ったうえで、開発担当のチームにバトンタッチすることで、製品化への道筋をつけました。
その後、自ら提案し次々世代の車載向けストレージを手掛け、車内が大きなコンピュータになっていく流れのなかで、ビッグデータをどう蓄積・活用するかを探究。現在は、次世代の主流と目されるストレージクラスメモリ(SCM)がシステム的にどうあるべきかを追究しています。OSが動いてプログラムを実行する際に、SCMとレジストリやキャッシュとの紐づけを研究・解明しているところです。
Q3 このポジションの魅力を教えてください。
時間の感覚が違う点だと思います。納期から逆算した開発スケジュールに則るのではなく、半年くらいの単位で業務フローを組み立てて進めていけます。「今日中に・今週中に」というスパンではなく、例えるならば大学の研究室のように半年スパンでじっくり研究を進めていくスタイルで仕事ができます。
一方で研究テーマの製品化・実用化に向けて、明確なロードマップを提示したうえで、常に進捗を明らかにする必要があります。必ずしも製品化できるとは限らない分、着実にステップを踏んでいるか?社会のトレンドや顧客のニーズに対して、何か次への兆しになる発見があるか?製品化が実現できても、その頃にはトレンドが変わっているのではないか?など課題や懸念事項は尽きません。
場合によっては、開発テーマをクローズするという判断も勿論ありますが、そうした見極めの繰り返しそのものが私たちの研究開発の成果になるのです。試行錯誤を繰り返す毎日こそ、先端製品・先端技術に対して目利きをする難しさであり面白さなのだと実感しています。
また、日常的にグローバルな環境も魅力の1つ。ハイパースケーラーをはじめ、主要なお客様は北米に集まっているので、アメリカのマーケティングチームを通じ、顧客のニーズ、業界の動向、製品のトレンド等の最新情報を入手しながら、先を読んで発想をします。
同時に、現地法人に在籍する開発メンバーは中東、アジア、ヨーロッパ、アメリカの各国で活動しているので、海外のエンジニアとの連携もごく普通。応用技術部門と一緒に海外のお客様を訪問したり、開発サイドと打ち合わせをしたり、メンバーは国内を含めて世界中を動き回っています。
Q4 どのような方にマッチするポジションでしょうか。
フラッシュストレージ事業戦略部にはメーカーの研究所出身者が多く、知見はPC、TV、SSD、新卒・キャリア入社組を含め多様なメンバーが活躍中です。
具体的には前述のとおり、非常にグローバルな環境ですので、世界単位でトレンドやマーケットの情報をいち早くキャッチアップすることが重要です。そのため、海外・外国語に強い方やユーザーの視点でシステム開発・構築経験があり、仮説を立てて試作して検証するサイクルを自分で回せる方には最適な環境だと思います。
もうひとつ大事なのが問題意識。お客様の悩みを聞いて、その先を見通す先見性、技術・製品・ユーザー等いろいろな観点から次の課題を見つける力です。事実、私たちも日々メモリやストレージをユーザー視点で見た際にどこにボトルネックがあって、どうしたら解決できるのか。SSDなど当社のデバイスは今後、どこにユーザーの受け皿があるのかなど、ユーザー側の視点から次に来るもの・来るべきものを模索しています。
Q5 転職を検討中の方へ、メッセージをお願いします。
フラッシュメモリのリーディングカンパニーであるキオクシアの中で「記憶や記録の未来」を先駆けて創造していけるのは、またとないキャリアになるのではないでしょうか。
『SNS』や『動画アプリ』といった世の中のトレンドをキャッチし、それによって変革しうるストレージやコンピューティングの世界や必要とされるものを描き、実現に向けて日々邁進することができます。私自身、「明日の世界はこうなったらもっといい」という未来図を描いて実現に向けて歩みを進めている真っ最中です。
決して平坦な道のりではないですが、粘り強く“楽しく”取り組める方と共にメモリやSSDの新たな可能性を切り拓いていきたいですね。
※インタビュー内容は取材時のものです。(2019年取材)